財務戦略
前中期経営計画を振り返って
2021年4月から2024年3月までの期間にわたり、中期経営計画「Plus」を展開しました。この計画では、最重要KPIとして営業利益率8%以上を目指し、デジタル技術を活用した既存事業の強化と新たな事業の育成をテーマに掲げてきました。各種施策を推進する中で、原材料費の上昇、エネルギー価格の高騰、部品の調達難などの外部環境の変化が大きく影響し、結果的には営業利益率の目標値には届かない結果となりました。成長投資についても、設備投資やM&Aの計画が予定より遅れ、EBITDAの目標値も達成することができませんでした。これらの結果を踏まえ、課題を明確にし、新たな中期経営計画への取り組みを進めてまいります。
基本方針
社会課題解決への取り組みによる企業価値向上を図るため、M&A、設備投資、研究開発投資ならびに人的資本投資などの持続的成長に必要な戦略的投資を優先的に展開するとともに、株主の皆さまへの長期的・安定的な利益還元を継続していくことを財務戦略の基本方針としています。
資本コストを意識した資本の効率的活用による持続的成長
当社は、企業価値向上へ向けた施策として、資本コスト低減と株主資本利益率(ROE)の向上に注力しています。事業活動から生み出されるキャッシュフローは、資本の増加ではなく、成長投資や株主還元に優先的に使用する方針です。また、成長投資を継続的に行うために、必要に応じて保有している有価証券を現金化し、投資に充てる予定です。2024年4月に完了したM&Aに伴うのれんの計上により、足許の利益率はやや低下しますが、売上およびEBITDAは増加が見込まれます。シナジー効果を最大限に活用し、事業拡大と収益向上を図ることで、中長期的にEBITDAマージン8%以上を目指します。今後もM&Aなどに向けた有利子負債の調達の検討や、有価証券を成長のための資金源として活用することで、資本コストを低減するとともに、より最適な資本構造を目指します。また、財務の資本効率性も重視し、適切な水準での株主還元を引き続き強化していきます。これらの取り組みにより、ROEの改善と成長への投資を効率良く進めていきます。
政策保有株式に関する取り組み
政策保有株式は成長機会への投資に活用するとともに、事業戦略や取引先との事業上の関係を総合的に考慮しています。これらの株式は、企業価値の向上と新事業創出のためのパートナー企業と協業で事業をする目的で、中期的な視点から保有しています。毎年1回、取締役会で上場政策保有株式全体を対象に、資本コストを考慮した保有リスクと保有に伴う便益(事業収益、配当、キャピタルゲインなど)を比較し、保有の妥当性を確認しています。さらに、工事施工における人手不足への対応策として、据付工事、改造工事、試運転業務などを担当する工事施工会社(以下、「SSV会社」)のネットワーク化に取り組んでいます。これは業務効率化のためのアウトソーシングの一環であり、土日が休日ではない会社とのネットワークを広げ、お客さまの都合に合わせたサポートや工事対応が可能となります。地域に密着した細やかな対応を行う工事施工会社として、SSV会社の株式保有を事業戦略上進めています。
株主還元方針
当社の株主還元は従来から安定配当を基本に業績と連動し、連結当期純利益の上昇に応じた配当の積み上げを基本方針としています。DOE1.5%以上を目指した配当を行い、株主資本比率を考慮した株主還元をしていきます。2023年度の配当は、業績状況を勘案し、配当金を配当性向26.6%の1株あたり44円としました。2024年度は通期で44円を予定しています。今後も基本方針に沿って、持続的成長投資と株主の皆さまへの安定した利益還元のバランスをとりながら対応していきます。