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前中期経営計画「Plus」(2021年4月〜2024年3月)を振り返って

前中期経営計画「Plus」では、情報化技術の急速な進展やEVシフトの加速など、時代の変化に対応しながら、「環境にPlusになる事を」「次の世代にPlusになる事を」「社会にPlusになる事を」「お客さまに新たな価値をPlus」「私たち自身に新たな技能・技術をPlus」と5つのPlusを目指して事業を推進してきました。この計画では、お客さまから選ばれ続けることを主要なテーマとし、営業利益率8%以上を目指しました。しかし、計画がスタートした頃は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞が世界規模で広がっており、部品不足や納入遅延、原材料価格の高騰、製造期間の長期化など、事業環境は非常に厳しいものでした。

そのような中、既存事業ではデジタル化を活用した付加価値の提案や、部品・消耗品などのアフターマーケットの拡大により安定した収益基盤を構築し、新事業では新たな市場や分野の開拓を図り、将来の成長に向けた取り組みを推進しました。

2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行し、それまで停滞していたさまざまなものが少しずつ動き出しました。半導体など自動車部品の供給制約が緩和されたことによる国内生産の増加や、EVシフトの加速もあり、当社の受注環境も徐々に回復しました。社内では2W1H(Where・What・How)を徹底し、どの市場の・どのセグメントに・どのように商品を提案するかを明確化。全拠点で横断的に取り組んだ結果、前中期経営計画の目標であった新規お客さま数2,500社の増加を達成することができました。

2023年にリリースした環境を常時監視するIoTソリューション「アメニティメータ」は、2W1Hの取り組みによる成果の一つです。一般的な環境測定は「点」で行われるのに対し、本製品では工場の作業環境を「面」で把握。三次元空間をセンシングし、粉塵濃度や温度、湿度などのデータから環境状態の変化を監視します。「Where=作業空間」に「What=アメニティメータ」を導入し、「How=作業環境を見える化」することで、働く人がマスクレスでも安心して安全に作業できる空間の実現を目指しています。

長期化する製造コスト高騰への対応

ここ数年は世界的にエネルギー価格が高騰し、当社の製品に欠かせない鋼材やスクラップなどの原材料価格も高騰しています。今後さらに輸送費や人件費だけでなく他のコスト増加も見込まれ、このトレンドは続くのではないかと予想されます。その中でもっとも顕著なのは、人手不足です。少子高齢化はますます進み、当社も技術系や生産系の現場において、この課題は避けて通れません。せっかく受注しても設計段階でのマンパワーが不足すると、後工程にも大きな負荷が発生します。特に設備機器の据付工事には多くの人手を要するため人材の確保が重要であり、23年度の業績に少なからず影響がありました。

これらの製造コスト上昇に伴う価格転嫁には、Win-Winの価値を提供することが重要と考えています。価格転嫁を適正なものと主張するだけでなく、廃棄物の一部引き取りなど、お客さまのメリットにつながる方策を併せて提案するということを心がけてきました。また、お客さまの現場に足を運んだ際、納品した設備機器の操作パネルをさっと一拭きするなど、どんな些細なことでも、いまできることを自分なりに表現することを大切にしています。小さなことこそお客さまのためを考えて、行動する。これは当社が創業当時から大切にする「ものづくりの心」であり、社員一人ひとりの細やかな心配りに落とし込まれています。

次なるステップへの課題

大きく3つあると考えています。

1つ目は先述したように人手不足です。人材の流動化は当社だけの問題ではなく、お客さまが抱える課題でもあります。自動化技術やIoTの活用をはじめ、手作業に代わるロボットによる省人化など、引き続き推進する必要があります。

2つ目は設備機器メーカーとしての立ち位置です。人口減少が進むと必然的にエンドユーザーも減少し、商品の製造数も減ることになります。さらにニーズの多様化から、爆発的なヒットは生まれにくい。それに対して我々メーカーはどこに・なにを・どのように提供するか。自動化による省人化、DXによる合理化、環境への配慮をふまえスピードを持って変化することが必要です。

3つ目は会社の人事制度です。これまでの人事制度の根幹となる考え方「活人主義」をさらに発展させ、人生80年を想定した新しい制度への変革が不可欠だと考えています。人生において長い時間を過ごす場所だからこそ、社員自らが成長を実感できる。そんな会社でありたいと考えています。

新中期経営計画に込めた思い

現在の社会は、少子高齢化、デジタル化、インフレ、環境問題などにより急速に変化しています。このような状況下、当社グループはお客さまの多様なニーズに対応し、一緒に取り組むことが重要であると考えています。

新たな中期経営計画のテーマは『「共創」~新しい価値を求めて~』地球とともに、仲間とともに、です。全てのステークホルダーとともに価値を創造し、喜びを共有することを目指します。

従来当社はお客さまとの企業間取引を中心に、ビジネスを展開してまいりました。今後はサプライチェーンも異業種も投資家のみなさまも「仲間」と捉え、これまでの共同開発の枠を超えて共に創りあげる「共創」で、新しい価値を生み出していきたいと考えています。「仲間」と互いの強みを生かし、その領域をB to B to B、B to B to C、さらに(B + B) to B事業へと進化させ、未来に向けた展開を加速させていきます。

社員に人生の舞台として選ばれる会社へ

当社では、会社が人を選ぶ時代から、人が会社を選ぶ時代へと移行していると認識し、会社は社員が育つ場として再定義しました。そのため、社員一人ひとりが主体的にキャリアを築ける環境を整備しています。

私たちが共有する価値観「活人主義」に基づき、結婚や出産など、人生の各ステージで変化があっても、社員が活力を持って働き続けられる職場を目指しています。同時に社員に対して「好きなことの追求」と「デジタル変革への取り組み」を推奨しています。積極的な資格取得の奨励やデジタル技術を活用した事務作業の効率化を推進していきます。また営業、技術、生産の各現場の意見にこれまで以上に寄り添い、ニーズに対応した取り組みを進めていきます。

今年の3月にはISO 30414の認証を取得しました。認証取得にあたり、全社員のデータを収集し分析。このデータを基に、人的資本の強化と当社の特長をさらに伸ばすための改善を図っていきます。

これからも新たな仕組みづくりや人事施策を通じて、社員に人生の舞台として選ばれる会社を目指します。

新東工業グループの不変の価値観

変わらないものの一つが、経営理念の「HEART」です。「Human Enrichment & Achievement through Reliable Technology=信頼される技術を通して人間としての豊かさと成果を」の精神に基づき、社員一人ひとりが世界に通用する技能や技術を身に付け、進化を続けることが欠かせません。技能は経験となり、経験は長期雇用を支える。これが「活人主義」の原点です。もう一つは「お客さまに選ばれ続ける」ことです。設備機器を販売して終わりの関係ではなく、充実したアフターサービスを通じて常にお客さまの困りごとに寄り添うことで、時代は変われど選ばれ続ける企業でありたいと考えています。売上や事業規模は社会情勢により上下しますが、「何かあれば相談いただけるお客さま」の数を増やし続けることは我々の使命です。これは長期的な収益力強化の柱になると考えています。

事業を通じた社会課題の解決に向けて

これまでお客さまの要望に応じた設備機器を提供してきた当社ですが、今後の環境変化とそれに伴う社会課題を考慮の上、重要課題(マテリアリティ)を特定したことは大きな転換点でした。当社の祖業である「鋳造事業」は世界最古の金属加工技術の一つであり、日本では「鋳物師」として尊敬の対象でした。現代では粉塵・騒音・臭気のため敬遠されたりもしますが、ものづくりの原点を支える技術であることに変わりありません。

未来の鋳造を支えるため、当社では現場に自動化技術を導入し、軽作業化することで、シニア世代の活躍を促進。働けば働くほど健康に&豊かになる工場を実現したいと考えています。さらに工場の熱をプールや野菜畑に利用。災害時には非常用電源を備えた防災拠点とすることで、地域から必要とされるコミュニティ空間へと進化を目指します。現実をしっかり捉えながらも大きな夢を描き、新しい鋳造の世界を切り拓いてまいります。

表面処理では素材を鍛える技術があります。この技術は自動車の軽量化を実現し、それにより燃費(電費)の改善とCO₂削減に寄与しています。循環型社会への貢献を目指し、この技術を他の用途にも展開していきたいと考えています。また環境事業においては、働く人が安心して作業できる環境の提供を重視しています。粉塵火災対策の提案や工場の作業環境の改善を通じて、環境に配慮した工場づくりに貢献しています。

これらの各事業の取り組みにより、社会課題の解決につなげていきたいと思います。

EBITDAマージンと長期的な視点

今後は資本コストとEBITDAの指標を意識した経営に取り組んでいきます。前中期経営計画ではM&Aを含む成長投資を積極的に行ったため、のれんの計上により当面は営業利益率の水準は高くないかもしれません。一方で数年後にはEBITDAマージンを向上させることは可能であると見ています。そして創出したキャッシュは、企業価値創造に向けたM&A、設備投資、研究投資、人的資本投資などの成長投資と、株主還元に配分します。

当社は、資本コストを6~7%程度と認識しています。今後もM&Aに向けた有利子負債の調達を検討するとともに、有価証券を資金源として活用することで、成長に向けた投資を継続し、資本コストを上回る利益を確保するための戦略を進めていきます。株主・投資家の皆さまにおかれましては、ぜひ長期的な視点で当社の成長を見守っていただきますようお願い申し上げます。

今後はサプライチェーン全体を含めた「仲間」との協力体制を構築し、自社のリソースと強みを連動させることで共創価値の創出を実現したいと考えています。それが当社のめざす「共に発展する未来」であり、存在意義であると信じ、当社グループ一丸となり全力で取り組んでまいります。

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